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恐るべし!昆虫病原糸状菌 [その他]

昨日、久しぶりに昆虫酒場を覗いてみた。
夏の間、スズメバチやチョウ、カブト、クワガタたちが集まり賑やかだったその場所も、今は羽音さえも聞かれず静まり返っていた。

ふと足元を見ると、コクワガタの立派なオスがいたが様子がおかしい。
良く見ると体のあちこちに白いものが付着し、息絶えていた。
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このコクワガタ、寿命で死んだのではない。
体に付着している白いものは「昆虫病原糸状菌」で、この菌によって死んだのだ。
昆虫病原糸状菌とは、昆虫に感染して病気を引き起こす糸状菌の総称。
これらの菌は、昆虫の体に取り付いてカビ状の菌糸を作る、いわゆるカビ病とも言われる。
その菌の中でも、体から水分を奪って殺し、体を硬化させるものをきょう病菌と呼び、感染した昆虫は乾燥してミイラ化する。
菌糸から出る分生子の色で様々な病名が付けられており、このコクワガタの場合は白い分生子なので「白きょう病」と呼ばれる。
この原因となる菌は、ボーべリア菌で白や黄色の分生子を作る。
同じ原因菌でも分生子の色が白い場合は白きょう病、黄色い場合は黄きょう病と病名が変わるからややこしい。
また分生子が緑色の緑きょう病などは、異なる原因菌による場合もある。
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そういえば夏にもカミキリムシが、同じように白きょう病で死んでいた。
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この昆虫病原糸状菌は過去に養蚕業などに被害を与えていたが、近年は果樹に被害をもたらすカミキリムシなどに対する生物農薬として使用され、研究もすすめられているらしい。

草原で草のてっぺんにとまって死んでいるバッタをたまに見かけるが、これも昆虫病原糸状菌の「エントモファガ・グリリ(Entomophaga grylli)」のしわざらしい。

昆虫の敵は、他の虫、鳥、爬虫類などの外敵の捕食に加えてこういった病気がある事を考えれば、自然の中で生き抜くのがいかに厳しいかを思わずにはいられない。

2010年10月26日 東京都
2010年7月31日  東京都
 白きょう病 ボーべりア菌(Beauveria bassiana) 
CANON EOS50D,EF100mm F2.8L IS USM/MT-24EX


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